麗し着物日和 vol.6 <ARGO /東京>

着物姿が映える日本各地のとっておきの場所をご紹介する道中記。第6回は、皇居や丸の内を一望できる東京・半蔵門にあるフレンチレストラン「ARGO」を訪ねました。

皇居を向かいに、イギリスをはじめ世界各国の大使館が並ぶエリアに建つ東條會館。この9階にフレンチレストラン「ARGO」はあります。東條會館は、1912年(明治45年)に写真師・東條卯作が東條写真館として創業。その卓越した撮影テクニックが評判となり、昭和天皇即位の公式写真をはじめ、エリザベス女王ご夫妻、歴代の総理大臣など著名人の肖像写真を数多く手がけた歴史があります。
そして、現在。東條會館内には、写真館「Tojo Photo Studio」をはじめ、トータルビューティサロン、そしてフレンチレストラン「ARGO」を有し、訪れる人たちの人生における美しい瞬間の思い出づくりを創造しています。

そこで、2022年7月にウェブマガジン「きもの苑」をリリースし、今年で1周年を迎えたお祝いも兼ねて「ARGO」をチョイス。「ARGO」の魅力は、クラシックフレンチをモダンに昇華させたエレガントなお料理はもちろん、皇居の緑と都心のビル群を望むことができる絶景にもあります。訪問したのは8月。窓側の席では、夏空の下で木々に豊かな緑が生い茂る景色を眺めながらお食事が楽しむことができました。

シェフの唐澤豪氏は、「レストランモナリザ」や「銀座レカン」でフランスのクラシック料理の伝統と技法を学んできた人物。新潟県出身でいらして、故郷の食材も取り入れていらっしゃいます。特筆すべきは、その創作性です。見た目の華やかさの中に、それぞれの食材の魅力を引き出す技法が秘められおり、口に運んだ瞬間、驚きと口福をもたらしてくれます。
例えば、とうもろこしと雲丹を使った贅沢な前菜。甘く濃厚なとうもろこしが、冷んやりとしたアイスクリーム状になっています。

そこに香り付けとしてウイスキーがスポイトで垂らされるのですが、まるで化学の実験のようなライブ感のある演出で、五感の隅々まで楽しませてくれます。

鳥の巣のようなこちらのお料理。カダイフを巻いたホタテを、立派な椎茸の上に乗せ、シェフの出身地である新潟の伝統的な発酵調味料「かんずり」を用いた一品です。サクサクとしたカダイフの食感の中には、ホタテの旨みが閉じ込められて美味。肉厚で食べ応えのある椎茸は圧巻です。

そしてこちらは、甘鯛の鱗焼き。バスク地方に伝わる濃厚なピペラードソースとともにいただきます。まるで花が咲いたように鱗が立ち上がり、その香ばしい食感と柔らかく弾力のある鯛の身のバランスが秀逸です。

そしてメインディッシュは仔牛のフィレ肉のステーキ。柔らかい肉質を最大限に生かした、なんとも美しいピンク色に仕上げた火入れ具合は、もはや芸術の域。ジューシーさが、その佇まいから溢れ出しています。

デザートは、夏の定番フルーツ「桃」を様々な調理法で盛り付けた贅沢な一皿。果肉がなめらかで、甘みたっぷりの桃をたっぷりと味わうことができました。

レストランにはライブラリーも併設されており、待ち合わせなどに使われています。インテリアやアートなどの洋書が並び、食後にゆっくり眺めてみると、また新しい世界に誘われるようです。

東京の中心に位置しながら喧騒を感じさせない由緒あるエリア「麹町」でいただく、創作性と繰り出される技法に感嘆させられるフレンチ。100年以上の歴史を紡いできた東條會館で、極上のひと時をお過ごしください。


ARGO
東京都千代田区麹町1丁目12
ONE FOUR TWO by Tojo 9階
TEL:03-3265-5504
<営業時間>
ランチ :11:30-15:00(L.O.13:00)
ディナー:18:00-22:30(L.O.20:00)
<定休日>
毎週月曜日・木曜日
※月曜日が祝日の場合は通常営業
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