麗し着物日和 vol.1 <京都/嵐山 祐斎亭>

着物姿が映える日本各地のとっておきの場所をご紹介する道中記。第1回目は幻想美に魅せられる「嵐山 祐斎亭」をご案内します。

霧雨が翡翠色の木々の葉を瑞々しく彩る、ある日の午後。向かった先は、平安時代から貴族の避暑地として栄えた京都・嵐山。明媚な眺めに陶酔しつつ、桂川沿いの小径を進むと見えてくるのが「嵐山 祐斎亭」です。風雅な佇まいをみせる建物は、約800年前に造営された後嵯峨・亀山上皇の離宮、亀山殿跡に立地する築150年の建造物で、元々は料理旅館だったそう。文豪・川端康成が逗留し、世界における「史上最高の文学100」にも選ばれた「山の音」を執筆した場所としても知られています。そして現在、館の主でもある染色作家・奥田祐斎さんのアートギャラリーとして力強い息吹を宿しています。

光によって染色が変化する独自の染色技法「夢こうろ染(ゆめこうろぞめ)」による作品で世界を魅了する奥田さん。日本の美と自然が融合する空間には非日常の世界が広がり、しんと静まる林の中において、五感が研ぎ澄まされる感覚を覚えます。

特筆すべきは、雄大な自然が織りなす圧倒的な幻想美をたたえる丸窓のお部屋です。古来より、日本建築の丸窓は禅の悟りを意味する書画「円相」からきており、”己の心をうつす窓”の意味をもちます。心を整え、丸窓に目を向ければ、春には満開の桜、夏には色鮮やかな新緑、秋には燃ゆるような紅葉、冬には雪化粧した木々が、まるで一枚の絵画のように切り取られ、息をのむ美しさが広がります。昔も今も変わらない、季節の移ろい。悠久の時を経て継承されてきた日本の美を、自然から空間から、心と身体で感じて佇む贅沢な時間。

日本の伝統美がしつらえで表現された茶室では、お茶とお菓子をいただくことができます。柔らかに差し込む⽊漏れ⽇に包まれ、⼼を癒す空間と時間を、ぜひご堪能ください。


嵐山 祐斎亭
京都府京都市右京区嵯峨亀ノ尾町6
<時間> 10:00~18:00(18:00閉門)
<定休日> 木曜日
<見学料> 2,000円(税込)
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