世界に誇る美の逸品 vol.1『岡山工芸』<京都>

纏う人を美しく見せる作品で定評のある、京都の濡描友禅の工房「岡山工芸」。日本で初めての手描友禅・女性伝統工芸士に認定された史上初の女性友禅師・岡山武子先生を中心に、手描友禅のスペシャリストを有する工房です。オリジナルブランド「ゆらぎ」は、古典柄をベースに女性作家ならではの感性でデザインされた、多彩な日本伝統色が美しいお着物です。京友禅の伝統と気品をにじませた作品を生み出す岡山工芸の制作の現場を、営業部部長の佐野忠史さんにご案内を頂きました。

お客様のニーズ、小売店の動向を的確に
キャッチし、新作の制作に反映

300年の歴史をもつ京友禅。糸目友禅、臈纈、刺繍、金彩など様々な技術から成る美しい着物には多様性が滲んでいます。そんな京友禅の多様性の延長線上にあるのが「ゆらぎ」の魅力。伝統的な技術や古典を大切に、時代の流れに合わせ、“今”の女性に似合うデザインが日々、追求されています。

圧倒的な女性美を滲ませる感性と職人の手仕事によって生み出される岡山工芸の優美な作品は、京都府知事賞、京都市芸術文化協会賞をはじめ数々の輝かしい受賞歴を誇り、京友禅の世界で高い評価を受けています。

佐野さんは、営業担当として、お得意先だけでなく、全国の小売店や催事などに出向き、お客様と直接のやりとりを大切にされています。着物を纏う方とダイレクトにコミュニケーションをとることは多くのメリットがあるといいます。
もともと美大で油絵を専攻し、クリエイティブな仕事に就きたかったという佐野さん。そのため、お客様の好みの色や柄ゆきを言い当てる才能は天下無比。佐野さんのファンになるお着物好きも多いそう。

「お召になる方と直接関わることが、作り手の学びに繋がるのでとても貴重な時間だと捉えています。お客様の声をヒントに商品化することが多いですね。着物にも流行がありますが、その流行はお客様が作っているもの。例えば、単衣や袷の境目が曖昧になっている現代において、季節に関係なく着用いただける帯や、透け感がなく単衣で通年楽しめる着物など、リクエストをヒアリングし、それが叶う商品をつくっています。お客様のニーズ、小売店の動向を的確にキャッチし、新作の制作に反映するよう努めています」。

古典に独創の世界をにじませた
人気のオリジナルブランド「ゆらぎ」

岡山工芸には総勢20名で構成された「意匠部」というブレーン組織が存在し、商品開発を行っています。岡山武子先生をはじめ、佐野さんが所属する営業部、染めやデザインに関わる職人から成り、それぞれの部門で意見を出し合い、情報を共有。定期的なこのミーティングは岡山工芸を支える重要な時間ともいえます。
「京都の着物づくりは完全な分業制で、デザイン、色、染めは私たちで行っていますが、その他の工程は、社外の専門職人に依頼しています。各工程のそれぞれのプロフェッショナルをいかに結びつけて、理想とする作品を作り上げていくか、伝え方やコミュニケーションを日々大切にしています」と佐野さん。

生地の特性を見極めてデザイン
生地選びと意匠の徹底したこだわり

岡山工芸の着物の美しさはこだわりの生地にもあります。取引している生地屋さんは、なんと20軒。
「生地屋さんの得意分野がそれぞれ違うため、『縮緬なここ、紬ならここ』など、最高の生地をつくるところにお願いしています。例えば、丹後の織と長浜の織では、風合いが異なります。丹後は地紋が入った変わり織が得意ですが、長浜は打ち込みがしっかりして無地感のすっきりした生地が得意です。私たちは、どちらかというと生地ありきで作品を作っていますね。『この生地なら友禅がいい、臈纈がいい、ぼかしがいい』というふうに、アイディアを出し合っています。美しい生地をいかにデザインによって昇華させるか、職人たちの腕が問われます」。

オリジナルブランド「ゆらぎ」をはじめ、常に独創的で目新しい作品と出合えるのも岡山工芸の特長ともいえます。それについて佐野さんは、「私たちの強みは自社工房を持っていること。手描友禅の職人20名が在籍し、常に新しい生地を開拓し、時代に合わせた新しい染めを展開できる工房は、京都でも数少ない存在だと思います。着物を購入されるのはリピーターの方がほとんどです。そのため、定番商品は2割にとどめ、8割は新しい生地や染めの商品を発表しています。同じものは作らない。お客様に飽きを感じさせないよう、いつまでも『新作を見てみたい』と思っていただける楽しさを提供していきたいと思っています」。

感動が満足につながる着物をめざして

お客様との対話から生み出される岡山工芸の時代にフィットした着物たち。新作を発表するたびに、「こういうのが欲しかったのよ!」という喜びの声が多く寄せられるそう。

「女性のお買い物はただ消費しているのではなく、お店や展示会に足を運んで、その時に目にした感動が満足につながるものだと思っています。美術品ってほどではないですが、『ゆらぎ』の作品をご覧になったら、楽しんで帰っていただける。余韻も含めた魅力を実感いただきたいですね」。

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岡山工芸
京都府京都市伏見区深草西浦町8丁目2−2
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