京鹿の子絞/京都府

京鹿の子絞

読み・きょうかのこしぼり
産地・京都府

京鹿の子絞は、京都で生産されている絞り染めの技法です。絞り染めは、日本にお括(くく)りの模様が子鹿の斑点に似ているところから「鹿の子絞り」といわれます。代表的なものは疋田絞で、染め残りの四角の中に点が出るのが特徴です。ほかにも一目・帽子・傘巻きなど多彩な技法があり、全体を絞りで埋めたものは「総絞り」もしくは「総鹿の子」と呼ばれています。鹿の子絞りは、布地に下絵を描き入れ、1人1種類の括り技法を持つ技術者が、絞り括りを行います。そして、多色染色のため桶絞、帽子絞の染め分け防染を行い、染料に浸して染色をし、その後、乾燥させて糸をほどき、湯のし幅出しをして完成します。極めて精緻な括りと高度な染めの技術から作り出される、色合いやにじみ具合、独特の立体感は、他の技法では決して得ることのできない美しさを創り出しています。室町時代から江戸時代初期にかけて、辻が花染として盛んに行われるようになり、江戸時代中期には、鹿の子絞りの全盛期を迎え、高級な絞り染めとして有名になりました。

千数百年に及ぶ絞り染の伝統
絞り製品の総称を「京鹿の子絞」といい、代表的なものに「疋田絞」があります。染め上がりが子鹿の背中の模様に似ていることから、一般に「鹿の子絞」として広く知られています。その他に、「一目絞」「傘巻絞」「縫締絞」「唄絞(ばいしぼり)」「帽子絞」「桶絞」「板締絞」など、約50種類にも上る絞り技法があります。京都では、これらの絞りについて、ひとりがひとつの技法だけを行うことが多く、特に「疋田絞」や「一目絞」は完全な専門職になっています。

手作業で18~20万粒
美しく括られた「総疋田絞」は、染め上がると均一の大きさの粒が、斜め45°の角度で正確に並びます。振袖ともなると、18~20万粒という数の括りが作られます。熟練者でも一日800~1200粒括るのが精一杯といわれており、一反を括るのに1年以上、振袖であれば一年半の時間を要します。贅沢とされた理由は、見た目の美しさだけでなく、そこにかけられた時間と手わざによるものといえます。