加賀友禅
読み・かがゆうぜん
産地・石川県金沢市周辺
日本の美しい自然美を写実的に表現した加賀友禅。加賀五彩といわれる臙脂・藍・黄土・草・古代紫の深みのある色合いを基調とし、落ち着いた武家風の趣ある雰囲気をもっています。外を濃く、中心を淡く染める「外ぼかし」で奥行きを出す技法や、あえて虫食い跡のある葉を模様として配し、自然美のリアリティを演出する「虫喰い」を特徴とする加賀友禅。また、鮮やかな色づかいで豪華絢爛な京友禅に対し、金箔や絞り、刺繍はほとんど用いず、染色だけで独特の世界観を創造しているのが、加賀友禅の魅力といえます。
加賀地方には、約500年前に「梅染」と称される加賀独特の無地染の技法がありました。江戸時代になると、模様が加わり、黒染めの兼房染や色絵、色絵紋などを総称して「加賀お国染」と呼ばれていました。やがて、京友禅の創始者で絵師の宮崎友禅斎が京都から金沢に移り住んだことで、大胆な意匠の技術が持ち込まれ、加賀友禅は確立し、飛躍的に発展。加賀友禅の制作工程は主な工程だけで9つあり、すべての過程で熟練の技術が求められます。板場友禅とは、模様を彫った型紙を使って染める手法で、型友禅や加賀小紋染とも呼ばれています。高度な技による精緻で繊細な模様は、手描き友禅とは違った魅力と風合いで親しまれています。
1975年(昭和50年)に国の伝統的工芸品に指定されました。