フォーシーズンズホテル京都で過ごす雅な一日【京都】|麗し着物日和 Vol.18

京都・東山に佇む「フォーシーズンズホテル京都」は、約800年の歴史を受け継ぐ池庭「積翠園」を核に、建築、アート、茶、食を通して京都の美意識を現代的に再構成したラグジュアリーホテル。館内には和の素材や意匠を取り入れたアートが随所に配され、伝統をそのまま再現するのではなく、現代の空間や感性へ再解釈しているのが大きな特徴です。庭、建築、工芸、食がひとつの世界観としてつながる空間を着物で辿ります。

八百年の歴史を受け継ぐ東山のラグジュアリー

世界各地でラグジュアリーホテルを展開するフォーシーズンズ。その京都のホテルで印象的なのは、華美な装飾によって豪華さを表現するのではなく、この土地にすでに存在していた歴史や自然を、滞在の価値そのものにしていることです。その象徴が、ホテルの中心に広がる池庭「積翠園」。12世紀にまで歴史を遡るとされる池泉回遊式の庭園で、約800年にわたりこの地に受け継がれてきました。館内を歩けば窓の先に庭が現れ、ラウンジやレストランでも水と緑が視界に入り、現代的な建築やアートと自然がひとつの景観としてつながっています。

建物を抜けて庭へ出ると、水面に映る木々や池を渡る風、水辺に集まる鳥たちが迎えてくれます。庭の小径を進んだ先には、池畔のラウンジ「楓樹」があり、抹茶や和菓子を味わいながら積翠園を眺めることができます。歴史ある景観の中に身を置き、ゆっくりとお茶をいただく。東山にありながら街の喧騒を感じさせない静謐な環境で、ゆるやかに流れる時間を味わえるのも、フォーシーズンズホテル京都ならではの贅沢です。

建築とアートで読み解く現代の京都

館内は現代の京都を表現する空間が広がります。高い吹き抜けに反復する木のルーバー、奥行きをつくる水平と垂直のライン、床から天井まで届く大きな窓。その先には積翠園の緑が切り取られ、外の景色そのものが室内の構成要素として取り込まれています。寺院や町家に通じる日本建築の感覚を、現代のホテル空間へと洗練されたかたちで展開しているのが印象的です。
そこに加わるのが、館内各所に配されたアートです。フォーシーズンズホテル京都では、日本画、清水焼、和紙アートなどをコレクションとして紹介しており、館内を歩くこと自体が、小さなアート巡りのような体験になります。

日本的な題材や素材を取り入れながら、その表現は現代的。鮮やかな色彩を用いた作品、大胆な構図の平面作品、素材そのものの質感を生かした工芸などが、木や石を基調とする静かな空間にアクセントを添えています。庭、光、素材、建築、アートがひとつの景色をつくり、日本の美意識を現代の空間へとつないでいく。伝統と現代が自然に重なり合うところに、フォーシーズンズホテル京都ならではの美しさがあります。着物で館内を歩くと、その関係性がさらに鮮明になります。染めの色や帯の文様もまた、空間の中のひとつの色彩となり、アート作品を眺めながら、自分の装いまでその景色の一部になったように感じられました。

エルメスが仕立てた人力車という工芸

世界にひとつのエルメスによる人力車も、フォーシーズンズホテル京都の美意識を象徴する存在のひとつです。白を基調とした車体には、上質なレザーや柳の籠編み細工、キャンバス地が用いられ、その端正な姿は、移動のための道具という枠を超え、一つの工芸作品のような佇まいを見せます。日本の伝統的な人力車と、馬具工房を起源とするエルメスのクラフツマンシップが交差することで、伝統に新たな表情が生まれています。こうした建築やアート、工芸を通して新たな美を提示する姿勢は、伝統技法を受け継ぎながら、時代ごとに新しい意匠を生み出してきた着物文化とも重なります。

「エンバ・キョウト・グリル」で京都の旬を味わう

ランチは、積翠園を望む「エンバ・キョウト・グリル」へ。ここで大切にされているのは、素材そのものの持ち味です。この日いただいたのは、季節のランチコース「GATHER」。最初の「サーフ&ターフ」には、ハマチのクルード、牛フィレ肉、人参クリーム、酢橘風味のフロマージュブラン、万願寺のコンフィ。続くタラゴンリゾットには、京都産和牛の炙りと鰻、万願寺の天ぷら。メインには京都産サーロインの串焼きに、ウイスキーグレイズ、万願寺のグリル、枝豆レリッシュ、ケールが添えられていました。

印象に残ったのは、京都の食材を単に「名産品」として添えるのではなく、一つの素材を異なる技法で見せていること。なかでも万願寺は、コンフィ、グリル、タルトへと姿を変えながらコースを通して登場。万願寺を甘味へまで展開することで、ひとつの京都素材が持つ可能性を、最後まで遊び心豊かに見せてくれます。

積翠園を眺めながら、その季節の京都を皿の上でも味わう。庭の四季と食卓の季節がつながっていることも、この場所で食事をする魅力のひとつです。

優雅なアフタヌーンティーの愉しみ

今回はランチを味わいましたが、エンバ・キョウト・グリルでは旬の食材を取り入れたスイーツやセイボリーで構成された見た目も美しい季節のアフタヌーンティーも楽しめます。着物で庭を散策したあと、午後の光の中でお茶を楽しむという過ごし方も、このホテルにはよく似合います。

▶︎ 着物で愉しむホテルのアフタヌーンティー【東京6選】はこちら

この日の着物コーディネート

この日の装いは、「京都」を感じるコーディネートに。着物は、京都で天目染の技法を生み出した工房による小紋です。北山杉の挽き粉などを用いることで、地染めに独特の立体感が生まれ、染めの中に奥行きと揺らぎを感じさせます。緑に包まれた積翠園では、その水色が景色の中にすっと浮かび、池の水や空の色とも自然に呼応しました。
帯は、京都の染処「古今」による両面の染め帯。博多織の白生地に、人間国宝の貴重な伊勢型紙を用いて染めたもので、表裏それぞれに異なる表情を楽しめるリバーシブル仕様の名古屋帯です。伝統的な染めの技術を受け継ぎながら、現代の着姿にもなじむ自由さがあります。京都の装いを、古典文様だけで表現するのではなく、京都の職人の手から生まれた染めを選ぶ。土地の景色を見るだけでなく、その土地でものを生み出す人の仕事を身にまとうことも、着物旅の楽しみ方のひとつといえます。

フォーシーズンズホテル京都に着物が似合う理由

八百年の歴史をもつ庭、数寄屋造りの茶室、現代建築へと翻訳された日本の空間感覚、館内を彩るアート、世界的メゾンと日本文化が交差する人力車、そして京都の旬を映した料理。フォーシーズンズホテル京都にあるのは、単なる「和」の演出ではありません。歴史あるものを守る一方で、それを現代の建築、アート、工芸、食へとつなぎ直し、今の京都として見せています。それは、長い歴史の中で技法を受け継ぎながら、新しい染めや織り、意匠を生み出してきた着物文化ともよく似ています。
庭園を歩き、建築とアートを眺め、食を味わう。そして京都で生まれた一枚をまとう。そうして過ごしてみると、ホテルでの一日そのものが、京都の美意識を巡る小さな旅になりました。

________________________________________
フォーシーズンズホテル京都
京都府京都市東山区妙法院前側町445-3
TEL:075-541-8288
▶︎ 公式サイト
_____________________________________